RSIが測るもの:上昇幅の比重
RSI(相対力指数)は、直近のローソク足で終値が上がった幅と下がった幅を比べ、0〜100の数字で表します。式は RSI = 100 − 100/(1+RS) で、RSは平均上昇幅を平均下落幅で割った値です。この式を整理すると、RSI = 100 × 平均上昇幅 ÷ (平均上昇幅 + 平均下落幅) になります。つまりRSI 70は、直近で平均的に動いた幅のうち70%が上がった側だったという意味です。高値・安値は使わず、終値だけを使います。 こう見ると、RSIは価格の高さではなく、直近の値動きの向きの構成を測る指標です。価格が史上最高値でも、直近の足が上げ下げを繰り返していればRSIは50近くになりえますし、大きく下がった後でも、ここ数日上がり続けていればかなり高くなることがあります。すべての足が上がるだけなら平均下落幅が0に近づいてRSIは100に張り付き、下がるだけなら0に張り付きます。そのため数字1つより、どのゾーンにどれだけ長くとどまっているかを一緒に見ることで、実際の流れを見落とさずにすみます。
ワイルダー平均で計算する手順
RSIはウェルズ・ワイルダーが1978年の著書で紹介したもので、平均も彼が使った方法(ワイルダー平均、RMA)で求めます。TradingViewの標準のRSI(14)と、このサイトのRSIツールは同じ計算です。最初の平均だけが単純平均で、その後は前回の平均に13、新しい値に1の重みを与えます。これは α = 1/14 の指数平均で、EMAでいえば期間27と同じ重みです。そのためRSI(14)は名前よりも長い過去を少しずつ覚えていて、計算を始めた地点が違えば値が少し変わります。 この性質が実際に問題になるのは、2つのツールのRSIが違うときです。取得した足が少ないと最初の平均の影響が残って値が数ポイントずれることがあり、足が積み重なるほど同じ値に近づきます。平均をワイルダー方式ではなく単純平均や普通のEMAに変えたRSIもあるため、同じ14でも値が違うことがあります。数字を比べる前に、まず計算方法をそろえるのが順序です。
- 上昇幅 = 終値が前の足より上がった分(下がったら0)
- 下落幅 = 終値が前の足より下がった分(上がったら0)
- 最初の平均 = 最初の14個の単純平均
- その後の平均 = (前回の平均 × 13 + 今回の値) ÷ 14
70・30と50のライン
ワイルダーは70より上を買われすぎ、30より下を売られすぎの目安とし、今でもほとんどのチャートがこの2本の線を標準で描きます。50は平均上昇幅と平均下落幅が等しい点なので、RSIが50より上にあれば、直近の上昇幅が下落幅より大きかったという意味です。そのため50のラインを流れの向きを測る基準に使う人もいて、値動きの大きい市場では80・20を基準にすることもあります。買われすぎ・売られすぎは基準線に付けた名前にすぎず、今後の向きを意味するものではありません。 これらの基準線が広く使われるのは、根拠が確かめられた境界だからというより、ほとんどのチャートに標準で描かれていて多くの人が同じ数字を見ているからに近いと言えます。そのため70を超える瞬間に注目する人は多いものの、その後に何が起きるかは市場や期間によって違います。基準線を変えるときも、過去の結果を見て合わせた数字はその過去にしか合わないことが多い点を念頭に置きます。
強いトレンドでは70より上に長くとどまる
少し休んでは再び上がる、を繰り返す上昇トレンドでは、平均上昇幅が平均下落幅より大きい状態が続きます。するとRSIは70より上に長くとどまり、押し目が来ても60台から再び上がることがよくあります。下の図では、RSIが初めて70を超えた後、価格はさらに約31%上がりました。こうした区間で70超えをすぐ下がる合図と読んでいたら、その後の上昇の大部分と食い違っていたでしょう。70より上というのは、これまで上がる力が強かったという要約であって、その力が尽きたという判定ではありません。 こうなるのは、上昇トレンドの押し目が短く浅いため、平均下落幅がなかなか大きくならないからです。下がるたびに買う注文が続くかぎり、RSIは高いまま保たれます。そのため強いトレンドの中では、70を超えたことより、押し目でRSIが40〜50台まで深く下がったかどうかを流れの変化の手がかりとみる人もいます。
例: 架空の上昇トレンドにRSI(14)を計算して描きました。RSIが初めて70を超えた後も価格は上がり続け、押し目でもRSIは60台で止まりました。
レンジでは30と70の間を行き来する
価格が一定の範囲の中で上下すると、RSIも30と70の間を行き来し、範囲の上のほうで高くなり、下のほうで低くなります。こうした区間では、70付近を高値、30付近を安値とみる読み方がよく当たるように見えます。問題は、範囲がいつ崩れるかをRSIが教えてくれないことです。価格が範囲を上に抜けると、RSIは前の図のように70より上に長くとどまることがあり、範囲の中で通用していた読み方が最も大きく外れます(レンジ相場の記事)。 レンジかどうかは、RSIではなく価格で先に確かめます。高値と安値が同じくらいの高さで何度止められたか、その間に出来高が減ったかが手がかりです。またRSIは大きさではなく比率なので、幅が1%のレンジと10%のレンジが似たRSIの形を作りうることも覚えておく価値があります。
例: 架空のボックス圏にRSI(14)を計算して描きました。価格が範囲の上下を行き来する間、RSIは約33〜71の間で動きます。
実測:買われすぎの後に実際何が起きたか
この講座がバイナンスの10銘柄の日足(各銘柄のバイナンス上場日から2026年9月まで、29,946本)で測った結果、RSI(14)が70より高かった足で20本後の終値のほうが高かった割合は58.0%で、すべての足で測った基準50.4%より高くなりました。中央値も+3.52%で基準の+0.15%より大きく、30未満の足の後も56.3%と基準より高くなりました。BTCの日足だけを見ると、70を超えた足369本の後の割合は71.8%(基準53.7%)でした。この期間では、買われすぎは下落を予告したというより、強い流れが続いた区間を示していたことになります。 基準と並べるのは、この期間に暗号資産がおおむね上がっていて、どの足で測っても半分以上が上がっていたからです。そのため58.0%は、50%ではなく50.4%と比べてはじめて意味を持ちます。30未満の後も70超えの後も基準より高かったことは、RSIが一方の端にあったという事実だけでは、その後の向きを見分けにくかったという意味にも読めます。
- 基準(すべての足、20本後):上昇50.4%、中央値+0.15%
- RSI 70超えの足2,294本:58.0%、+3.52%
- 70より上から70未満に下がった足577本:56.3%、+2.75%
- RSI 30未満の足1,087本:56.3%、+2.24%
足の長さ、ダイバージェンス、そしてツール
RSI(14)の14は日数ではなく、ローソク足の本数です。1分足なら14分、日足なら2週間を見ていることになり、同じ70でも含んでいる時間がまったく違います(タイムフレームの記事)。RSI レーダーはバイナンスの20銘柄の1分足RSI(14)を表示するので、値が数分で30と70を行き来することもあります。価格の高値は切り上がるのにRSIの高値は切り下がる、というように両者が食い違うことをダイバージェンスといい、第6部のダイバージェンスの記事で別に扱います。RSIダイバージェンス検出がこれを見つけて、チャートに線で引いてくれます。 同じ瞬間でも、1分足のRSIは買われすぎなのに日足のRSIは50付近、ということはよくあります。そのときはどちらが正しいかを考えるより、自分が見たい期間がどの足にあたるかを先に決めておくほうが混乱が少なくなります。足が短いほど、1回の約定の集中がRSIを大きく揺らします。
この数字が語らないこと
上の実測はルールではなく、ある期間の記録です。RSIが70を超えた足は上昇区間に続けて出るので、2,294本は互いに独立した事例ではありません。またこの期間は暗号資産が大きく上がったため、すべての足の20本後の平均リターン(+4.62%)からしてプラスです。足の長さや見る期間を変えると差も変わります。BTCの4時間足では、70超えの足の後の上昇割合は6本(1日)後で53.1%と、基準の52.0%とほぼ同じで、30本(5日)後には58.2%(基準52.8%)でした。ここで言えるのは、このデータでは「買われすぎならすぐ下がる」が確認されなかったというところまでで、70や30を超える瞬間を売買にどう使うかは、この記事では決められません。 多くの銘柄をまとめて表示するツールで同時に買われすぎが出る日も、同じ理由で銘柄の数だけの根拠にはなりません。
暗号資産と株式で違って見える点
RSIは終値どうしの差で計算するので、市場に休みの時間があるかどうかが値に直接入ります。韓国株は通常取引が終わると翌日の始値まで取引が止まり、その間のニュースは翌日の最初の変化にまとめて反映されます。サムスン電子やSKハイニックスが窓を開けて大きく上がると、その1日分が1つの上昇幅として入ってRSIが一気に跳ね、ワイルダー平均のせいでその跡がしばらく残ります。米国の指数や大型テック株でも、決算発表の後に窓が開くと同じことが起きます。暗号資産は24時間取引されるので、同じ大きさの変化も複数の足に分かれがちです。韓国株には1日±30%の値幅制限があって足1本の上昇幅に上限がありますが、暗号資産にはありません。変動の大きさも違います。暗号資産は1日の値動きが大きい傾向があるのでRSIが70・30を行き来することが多く、そのため80・20を使う人もいます。出来高はRSIの計算に入らないため、取引がほとんどない時間帯の小さな動きもRSIを同じ重みで動かす点は、両方の市場で同じです。
実践の確認手順
リアルタイムのチャートのRSIは、最後の足が閉じるまで確定しません。進行中の足の終値の位置に現在値が入るため、取引の途中で70を超えたRSIが、足が閉じたときには70未満で終わることはよくあります。RSI レーダーのように1分足を見るツールでは、こうした変化が数秒単位で起きます。上の実測はすべて閉じた足の値で測ったものなので、進行中の足の値とそのまま比べてはいけません。以下は、RSIの数字を読む前に確かめる順序です。
- 足の長さ:14が何分・何時間・何日にあたるか
- 計算方法:ワイルダー平均で求めたRSI(14)か
- 最後の足が閉じた足か、進行中の足か
- 価格がトレンド中かレンジか(RSIより価格を先に)
- 70・30の外にとどまった時間と、50のラインの上下どちらにいるか
- 窓や急騰・急落の足1本が値を押し上げたのではないか
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